Interview 016

Shion Sugawara

Shion Sugawara

ミシンだからこそ描ける
線が生み出すものづくり。

May 14, 2019

刺しゅうの魅力や惹かれた理由を聞く連載インタビュー。第十六回目は、ミシン刺しゅう家として精力的に個展やグループ展での作品発表を続ける、菅原しおんさんに登場いただきました。


――ミシンで刺しゅうを始めたのはいつ頃からだったのでしょうか。

高校卒業後美大に進学したのですが、大学3年生の夏休みに毎日1枚絵を描くという課題を出されたんです。私は絵が苦手だったので、穴あけパンチで細工をしたり、紙に糸で縫ったり、シールで絵を表現したりなど、絵を描くというよりはいろんな技法を試そうと思って取り組みました。

これ(写真上から3番目)が今の作品に通じるのですが、ピーマンを並べて上から見た様子を紙にミシンで縫いました。自宅に職業用のブラザーのミシンがあったので、ミシンを使ってやってみようかなと思ったのが始まりですね。

――今の作風の原点が、学生時代の作品なんですね。

縫い終わって裏を見た時に、ランダムで思いがけない線が生まれていたことにハッとしたんです。普通にペンで描くだけではこのような線は生まれないですよね。他の色の糸も試したのですが、白地に黒というのが一番糸の面白さが出ると思いました。ミシン刺しゅうの魅力に気づいた、きっかけの一枚ですね。

――どのように制作していくのでしょうか。

制作する時は、まず下絵を描きます。ミシンには布押さえがあるので縫う時に見えづらくなってしまうからです。また、裏面から縫っているため柄や文字を反転させる必要があるので、下絵はしっかり描くようにしています。

縫う時は、進む速度に対して少し早めに生地を送ったり、糸調子を微妙に調整することで、糸の表情に変化をつけています。勢いではみ出してしまうこともあるのですが、ほとんど失敗はないですね。

ブラザーのミシンは、大学時代に新しいものを購入してから今も使っています。1日で12時間くらいミシンを使う時もあるのですが、全然壊れません。私ほど使っている人はいないんじゃないかなと思います(笑)。

――ミシンでの表現方法の魅力を、ご自身ではどのように捉えていますか。

一度機械を通して作品が生まれることに、不思議な魅力を感じています。自分で意図して糸だまりをつくることもあるのですが、裏を見た時に初めて気づく糸だまりもありますね。自分で縫っているけれど、予想もしなかったアレンジが入ることが毎回発見です。二度と同じものがつくれないということがすごく面白いんです。

――偶然性に魅力を感じているんですね。この名画シリーズ(写真上から6番目)は、額装を含めて作品にしているところが素敵です。

2017年3月に開催した「ある収集家の名画コレクション展」で発表しました。遠い存在に感じる名画を布で表現したら、また違った見え方になるんじゃないかと思って縫ってみたんです。

額縁は作品が完成してから考えたのですが、そこに自分らしさを出したくて額も含めて見せようと思いました。絵自体は、どれも多色なので黒一色で描くことは自分の中でのチャレンジでした。描き込み過ぎても伝わらないですし、有名な絵なのでその印象を壊さずに黒一色で描くことが、結構難しかったですね。でも一色だからこそ、糸のテクスチャーを変えるように工夫したりして、糸の可能性を勉強できたなと思います。黒一色で描くという、自分の表現の幅が広がった思い入れのある展示になりました。

――最後に、ご自身の創作の原動力を教えてください。

やはりお客さんから反応してもらえることですね。作家はすごく孤独だと思うんです。ずっと引きこもって作業を続けているので、展示でいろんな方にお会いして直接声を聞けることがすごくうれしくて、制作の日々が報われます。

私は熱しやすく冷めやすいタイプなのですが、ミシンだけは続いているんです。一度の展示で最近は400点ほどつくることもあります。そうすると休んでいられないですし、つくらなきゃという創作意欲も掻き立てられますね。つくりたいと思ったら、すぐつくる。その熱を大事にしたいと思っています。


Shion Sugawara

武蔵野美術大学テキスタイル専攻を卒業後、アパレルブランドで5年間テキスタイルや小物のデザインを手がける。2016年に退職、「sennokoto」を立ち上げる。ミシン刺しゅうのバッグやスカート、インテリア小物などの作品を中心に作家活動を始める。イベントや展示で作品を発表する他、セレクトショップでの販売も行う。6月に東京・西荻窪のアトリエすゞ途にてグループ展、東京・目黒のmaruse B1 galleryにて個展を開催予定。

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https://sennokoto.wixsite.com/sennokoto